スモッグに覆われた北京市内(c)時事
スモッグに覆われた北京市内(c)時事

 経済格差から役人の汚職、少子高齢化など「危機のデパート」ともいっていい中国に今冬、新たな危機が加わった。微小粒子状物質「PM2.5」の危機である。空気中を漂う2.5マイクロメーターより小さい微粒子で、肺や気管支の深奥まで入り込み、ぜんそくや肺がんを引き起こす恐れがある。大気汚染源でも最も人体への影響が大きいといわれるものだ。

 日本では東京都が2003年から都内を走るディーゼル車両の排ガスにPM規制を打ち出したことで知られる。規制導入のきっかけになった1999年の石原慎太郎都知事(当時)の会見では、知事がペットボトルに入った黒い物質を報道陣の前で振った映像を記憶している人もいるだろう。あれがPM2.5である。あの煤煙の固まりのような物質が呼吸器官に入ってくると考えただけで大半の人が気持ち悪くなるだろう。

 

空気も水も――深刻化する環境汚染

 PM2.5が日本の基準の10倍から30倍の水準で漂っているのが今の中国の空気であり、北京市、天津市、河北省、山西省、陝西省、江蘇省などをPM2.5に汚染された大気が覆っている。中国の人口の約4割が有害微粒子濃度の高い汚染地域に居住していることになる。

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