自動車と共に二〇世紀を代表する産業となった電気・電子分野は、半導体の進化が最大の牽引役だったが、それだけでは産業としての裾野の広さを持つことはできなかった。むしろ半導体の優れた特性を生かす周辺領域の進化こそ、電気・電子産業に現在をもたらした最大の要因なのかもしれない。だとすれば、その象徴は実装技術である。 驚くべきは、半導体が「ムーアの法則」(集積可能なトランジスタの数は約一・五年で二倍に増える)通りに進化を遂げる一方で、電子部品をプリント基板に載せる実装技術の基本発想は、ここ数十年来まったく変わっていないという事実だ。表面実装技術。それはムーアの法則以前に確立されていた。その礎は、松下電器産業の一人の技術者が試行した「リードレス・チップ工法」にある。 この技術者が試みなければ、偉大な経営者のもとでも松下は新たなものづくりは成し得ず、「パナソニック」が世界ブランドになることもなかった。 電気・電子業界が「実装からJISSOへ」と新たな競争力の確保に力を注ぐ現在でも、松下の技術者がタネを蒔いた表面実装技術と、それを生み出した問題意識は今なお新鮮だ。技術者は、こう述べている。「単なる自動化ではなく、商品開発とものづくりを根底から変えてしまうような機械化でなくてはならない」

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