1日から乳児用粉ミルクの持ち出しが制限された香港。広東省深圳の中港境界などで初日から早くも違法な持ち出しが相次いで検挙された。中国本土と香港を行き来する「運び屋」が香港で粉ミルクをまとめ買いして中国に運んでしまうため、香港で粉ミルクの品不足を招き、香港人の間で不満が強まっていたことに対する措置だったわけだが、この問題に対する中国国内の反応が面白かった。

 そもそも香港では自由貿易を標榜する伝統から、貿易にこうした制限を加えることには慎重な姿勢を取っている。それでも今回ばかりは子供を抱える香港人の反中感情に火がつきかねないため、香港政庁としても異例の措置に踏みきった形となった。

この問題の背景にあるのは、中国の食品安全の問題だ。中国では粉ミルクならぬ毒ミルク事件が相次ぎ、国内産の粉ミルクに対する不信感がぬぐいがたいものとなっている。香港から運ばれる粉ミルクが高値で取引されるため、運び屋ビジネスが隆盛を極めてしまった。

中国では、いわゆる「憤青」と言われる愛国的若者を中心に香港批判も出てはいるが、一方で、ウエブ上での知識人たちの反応を洗い出してみると、必ずしも香港批判一色ではなく、むしろ自国の食の安全をおろそかにしてきた中国の現状への反省を求める声が目立っていた。

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