フロッグマンじゃないってば

執筆者:成毛眞2004年11月号

 水難事故などのニュースを見ていて、ダイバーとしてはいつも気になるのが潜水用語だ。ただいまダイバーが「酸素ボンベ」を背負って海に入りました、などとレポーターが説明していることがあるのだ。 海のなかでは溶接をする目的以外には酸素ボンベは使わない。正確には「空気タンク」である。潜水士が背中にくくりつけているのは二百気圧に圧縮した地上の空気そのものなのだ。 実は酸素は毒物である。高圧高濃度の酸素を吸い続けると、酸素中毒を来しめまいや麻痺が起こるだけではなく、死に至ることもある。テレビの前のよいこはニュースを信じてはいけない。 ちなみに、酸素中毒になる高圧とは分圧一・六気圧。つまり純酸素ボンベで六メートルよりも深く潜ると酸素中毒になる。空気中には二〇%の酸素があるため、たとえ空気タンクを背負って潜ったとしても、深度七十メートルになると発生する。 それ以外にもニュースでよく聞くのは「アクアラング」を背負って潜るダイバーだ。アクアラングとはアクアラング社の商標である。普通名詞はスキューバ。「フロッグマン」もすごい。これは米軍の特殊部隊のこと。若い女性が伊豆海洋公園で敵艦に爆薬を仕掛ける訓練をしているとは思えない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。