共和国「フランス」の理念を受け入れるか否か。人口の一割近くを占めるイスラム系移民の扱いに悩む政府の対策は―― 猛烈な仕事ぶりと派手なパフォーマンスで人気を集め、シラク大統領の後継者の有力候補にまでのし上がってきたニコラ・サルコジ財務相は、内相時代の昨年五月、ルモンド紙の論壇でイスラム系移民の同化問題についてこう論じた。「『フランス共和国の基本理念とイスラム教とは両立しない』などと決めつけるのは、差別意識に根ざした発想だ。他の宗教を信じる人々と何ら異なる点はない」 イスラム系移民やその子孫も政教分離や男女平等といったフランスの理念を受け入れ、仏社会に同化することができる。イスラム教は妨げとならない――。サルコジ氏がそう考えるのは、彼自身が移民の子孫として仏社会に同化した自信に基づくからに違いない。 内相時代、不法移民に対する強硬派として鳴らしたサルコジ氏が、実はハンガリー移民の二世であることは仏国内で知らない人はいない。しかし、そのことを意識する人もほとんどいないだろう。この先彼が大統領選に立候補しても、移民二世であることはハンディにならないとみられる。彼はフランスの価値観を全面的に受け入れ、「フランス人」としてのアイデンティティーを確立していると見なされるからだ。

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