天災の前に人は無力だということを痛感させられた夏だった。日本では観測史上最多の九個の台風が上陸、数多くの死傷者と家屋の被害をもたらした。一方、遠く離れたアメリカ大陸東部でも、観測史上最多のハリケーンが来襲。カリブ海諸国では数千人単位の死傷者が出たほか、フロリダなど米国南東部でも多大の被害を被った。大型の「アイバン」に限っても被害額は膨大で、保険がかけてある被保険資産の被害総額だけで三十億―八十億ドルに達する見通しだ。 当然、保険会社も予想外の相次ぐ災害の前に青ざめている。リスクを引き受けた保険会社は、再び保険をかけるのが一般的で、これを再保険と呼ぶ。つまりこの手のリスクは再保険会社に集中することになる。再保険世界二位のスイス・リー(スイス再保険)は、八月中旬から相次いだハリケーン「チャーリー」と「フランシス」、「アイバン」に、「ゾンダ」と名付けられた日本の台風十八号の被害を合わせた同社の保険金支払いが五億九千万ドルにのぼることを九月末に明らかにした。当初は業績への影響は限定的としていたが、さすがに大打撃を被ることは間違いない情勢になった。 世界最大の再保険会社ミュンヘン再保険は二〇〇二年に世界的な株価の大幅下落に直面、赤字決算に陥った。赤字決算は二十世紀初頭のサンフランシスコ大地震以来で、再保険会社にとっては未曾有の苦しい年だった。そこからようやく立ち直ろうとしていた時だけに、痛みは大きい。

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