もう少し報じられ、議論されてもよさそうなものだが、と思う出来事があった。3月6日に、シリア・ゴラン高原で国際連合兵力引き離し監視軍(United Nations Disengagement Observer Force:略称UNDOF)の要員が、反政府武装勢力の一派によって拘束された事件である。拘束されたのは21名のフィリピン人要員だった。「ヤルムークの殉教者旅団(Martyrs of Yarmouk Brigades)」を名乗る犯行グループはビデオ声明を発表し、ゴラン高原のジャムラ村(地理的にはゴラン高原の一部で、非武装地帯とシリアの統治下にあるダルア県との境界地域にある)からの政府軍の撤退を要求した。

 UNDOFとは、1973年の第4次中東戦争後のイスラエル・シリア間の緩衝地帯を監視する国連平和維持軍であり、1974年5月末の国連安保理決議350に基づき展開している。イスラエルは1967年の第3次中東戦争以来ゴラン高原を占領しているが、イスラエルによる占領地と、シリアのダルア県の間の非武装地帯をUNDOFが監視する形である。

 通常は総勢約1000人からなるUNDOF部隊は、フィリピンが司令官と多くの要員を提供する他、オーストリア、カナダ、クロアチア、そして日本が要員を派遣してきた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。