2012年米大統領選挙でバラク・オバマ大統領は大統領選挙人332人を獲得し、ミット・ロムニー共和党候補の獲得人数206人を126名も引き離して再選を果たした。今回を含む近年の大統領選挙結果を踏まえて、米国内では米国政治の専門家や共和、民主両党のストラテジストらの間で、民主党が大統領選挙で、共和党に対し長期的に優位な立場を確立したのではないかとの議論が展開され始めている。実際、先般、来日時に都内で意見交換した共和党系コンサルタントは、将来の共和党の展望に悲観的見方を示しており、共和党が2016年大統領選挙でどのような有力候補を擁立してもホワイトハウスを奪還することは困難との認識を明らかにしていた。筆者は、このコラムを米東海岸に向かっている機内でしたためているが、米東部の主要都市における米国政治の専門家や民主党、共和党の関係者らとの議論の中で是非取り上げたいと考えているのが、民主党が長期的に政権を維持するうえで不可欠となる新たな「政治連合(“political coalition”)」を構築しつつあるのではないか、という問題である。

最重要・フロリダも落とした共和党

 民主党が新たな「政治連合」を構築しつつあるのかとの議論に入る前に、昨年の大統領選挙を地域的視点から検証してみたい。2012年と2008年の大統領選挙を比較すると、オバマ大統領が前回勝利した州のうち、今回敗北したのはわずかにインディアナ、ノースダコタ両州のみ。他の26州とワシントンDCで勝利を収めた。北東部地域のすべての州、インディアナ州を除く5大湖周辺の中西部諸州、ワシントン州からオレゴン州、そして、カリフォルニア州に至る太平洋西岸地域、ネヴァダ州からコロラド州、そして、ニューメキシコ州に至るヒスパニック系有権者が多く居住する地域でも、前回に続き勝利を収めた。そして、共和党の有力政治家であるジェブ・ブッシュ元州知事とマルコ・ルビオ上院議員の地元であり、両氏がロムニー氏当選のために必死の選挙キャンペーンを行ない、共和党全国委員会(RNC)も全国党大会を開催して勝利を目指したフロリダ州でも、オバマ大統領は2008年に続き勝利した。「接戦州」の中では最大の大統領選挙人29人を抱え、共和党がホワイトハウス奪還のために最重視したフロリダ州でもロムニー候補が敗北したことは、共和党関係者にとって大きな衝撃だった。共和党関係者の立場から見れば、同党はヴァージニア州を除く南部諸州、カンザス州やネブラスカ州をはじめとする酪農も盛んな穀倉地域、ワイオミング州やモンタナ州などのロッキー山脈地域でしか勝利できない政党になりつつあり、民主党に大統領選挙で地域的にも押し込められているのは明白である。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。