パレスチナ自治政府・PLO(パレスチナ解放機構)の故アラファト議長が秘密裏に管理してきたとされる「パレスチナ資産」は、総額四十億―六十億ドルにのぼる。 PLOの国際的な事業活動は、これまでも一部で指摘されてきた。南米でのバナナ栽培やアフリカでのダイヤモンド取引、アラブ各国の不動産やギリシャの船会社、モルジブの航空会社などへの投資――。これらを手がけてきたのは、アラファト氏側近の仕切るさまざまな企業だった。 アラファト氏は、自治政府名義、PLO名義、個人名義など少なくとも五つの口座を用途別に使い分けてきたと見られる。イスラエルとの和平合意後は、テルアビブの銀行にも口座が開設され、イスラエル政府の暗黙の了解の下、反アラファト派対策の資金の窓口とされてきた。この口座にはイスラエルが西岸・ガザ地区で徴収した税金の還付分が振り込まれている。 こうした“アラファトの遺産”をめぐっては、スーハ未亡人と自治政府との確執ばかりが騒がれるが、事態はそれほど単純ではない。資産の全容を知るのは長年アラファト氏の財政顧問を務めてきたモハメッド・ラシッド氏ら数名に過ぎないのだという。

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