フランスの大富豪リリアン・ベタンクールさんの資産を巡る疑惑にからんで、サルコジ前大統領が3月21日、捜査着手に相当する予審開始通告を受け、容疑者として扱われることになった。このできごとは、フランス国内で衝撃を持って受け止められた。1年足らず前まで国家元首だった人物に対して、捜査当局が大胆にも切り込むなどと、誰も思っていなかったからである。一方で、サルコジ氏は以前から財閥や財界との癒着体質が指摘され、「やっぱり」と思った市民も少なくないようだ。サルコジ氏の復帰を期待していた右派政界への影響は小さくない。

 リリアン・ベタンクールさんの膨大な財産を巡る動きは、これまでもしばしばゴシップの対象となってきた。

 ベタンクールさんは化粧品最大手ロレアルの大株主で、創業者の父ウージェンヌ・シュエレール氏から資産を引き継いだ。フォーブス誌の今年のランキングによると、資産総額は300億ドルに達し、世界で9番目、女性としては世界一の富豪にあたる。フランス国内ランキングでも、高級ブランド最大手「LVMH」(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)の総帥ベルナール・アルノー氏をしのいでトップの座に着いた。

 しかし、なにぶん現在90歳という高齢で、資産の管理能力に疑問が持たれていた。2008年には、「男友達」と称して仲良くなった写真家に10億ユーロ分もの財産を分け与えてしまったことが発覚。実の娘フランソワーズさんが写真家を「高齢による判断能力低下につけ込んだ」として告発する騒ぎになった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。