上昇し始めた「真の景気指標」

執筆者:梅田望夫2004年12月号

 ファッション、スポーツ、芸能、インターネット。 日本の若い友人たちと話していて驚いた。日本では、インターネットをこういう文脈に置いている人が少なからず居るんだなぁと。 言われてみれば、楽天のプロ野球参入がその象徴ではある。 グーグル登場の時代的意義についていくら私が一生懸命話しても、日本企業経営者の反応はおそろしく鈍い。それが最近の私のフラストレーションの一つなのだが、アイドルやサッカー選手の顔と名前が一致しなくても不安にならないのと全く同じ心理なのかもしれない。そう考えれば、彼らの無関心にも少しは納得もいく。 つい先日、ある老舗出版社の新書担当編集者の方と話していて、「あれだけたくさんのニッチ・テーマの新書が毎月毎月書店に溢れているのに、どうしてグーグルという本が出ないんですか?」 と訊ねたら、「いやぁ、企画会議で通りませんよ」というにべもない返事が返ってきた。へぇ、そんな感覚なのかと少し残念に思った。 シリコンバレーはその対極にある。バブル崩壊後低迷していた景気がついに底を打ったのは、間違いなくグーグル効果である。 同社の株式公開後の時価総額が数兆円規模で上昇しているという経済的要因はむろんその大きな理由の一つであるが、シリコンバレーが元気さを取り戻したのは、「インターネット産業はやっぱりテクノロジーによって牽引できるものなのだ」ということをグーグルが証明したからである。

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