アジアの著作権とアダルトビデオ

執筆者:野嶋剛2013年4月1日

 最近やたらに著作権にみんながこだわるようになり、有り難い半面、面倒くさい思いをすることも増えてきたが、そんななかで、著作権とは一体どういうものなのかを考えさせる司法判断が台湾で示されて話題になった。

 台湾でアダルトビデオ(AV)の有料ダウンロードサービスを提供している会社11社に対し、日本のAVのメーカーなどが著作権法違反で訴えていたのだが、AVは観客に性欲を引き起こすことを追求したもので、著作権法の定義する「文学、芸術、科学などの創作」には該当しないとして、「著作権法の保護を受けることはできない」との理由で検察側は台湾の企業を不起訴処分とした。

 これは1999年の台湾の最高裁判所の判決に基づく判断だという。日本のAVメーカーはわいせつ物頒布だとも訴えていたのだが、これらのサイトには未成年の閲覧を制限するメッセージがあることでわいせつ物の頒布にあたらないと判断された。

 つまるところ、「AVを作ることはいけないが、AVを売って儲けることは違法ではない」ということになる。そんなバカな、と思われるかもしれない。日本では著作権法の保護を受けることが判例でも確定している。あまりに過激なものでもない限り、公序良俗に反してはいない、という考えである。しかし、日本のようにAVが開放されている社会は、かえって世界の中では、特にアジアでは少数派なのである。つまり、この問題の背後には、AVをどう考えるかという文化的な問題が横たわっており、日本のようにAVが合法的な社会と、台湾のようにAVが違法な社会との違いを物語っているのである。

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