年内にも発表される知財保護の新施策

執筆者:水田賢治2004年12月号

 中国では知的財産関連の職業がブームである。この十月に行なわれた特許申請の代理人資格を得る国家試験には上海だけで約千六百人が殺到。前回二〇〇〇年の受験者が四百人ほどだから、その人気のほどが窺える。ある中国系電機メーカーの法務担当者は「受かったら転職するよ」と打ち明けた。資格を手に入れて特許代理事務所に就職すれば、有力弁護士なみの高給は堅いとされているのだ。 とはいえ法務担当氏は、どうやら本気ではないらしい。目下、企業側も知財問題に詳しい人材を熱心に集めているからだ。背景には皮肉なことに、中国の知財環境が決して改善されていないという事情がある。例えばブランド品のニセモノである模倣品の摘発件数(商標権侵害)は、一九九八年の一万五千件弱に対して二〇〇三年は二万六千件強。中国が消費市場の性格を強めれば、それだけブランド品の数も増え、すでに日本や欧米メーカーだけでなく、中国メーカーもニセモノに頭を悩ませている。 もちろん中国政府も座視しているわけではない。注目すべきは年内にも打ち出される見通しの、知財侵害に対する罰則の強化策だ。本稿執筆時点では「公安部と検察院が合同で草案を作っている段階」(関係者)だが、罰則強化の方向性自体は変わるまい。今年四月に訪米した呉儀・副首相や、九月に訪中した日本経団連の奥田碩会長と会談した薄熙来商務相も罰則強化に言及しており、この問題は一種の対外公約でもあるからだ。

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