「赤字部門を押しつけるつもりか」「我々の正当な権利を拒むことはできない」――。伊大手自動車メーカーのフィアットと米ゼネラル・モーターズ(GM)が、いったん合意したはずの契約を巡って睨み合いを続けている。係争に発展しかねない深刻な状況だ。 対立を招いているのは、両社が二〇〇〇年に資本提携した際に交わした契約内容。GMはフィアットの自動車部門子会社(フィアット・アウト)の株式二〇%を買収したが、その契約には「フィアットは残りの八〇%をGMに買い取らせる権利を持つ」との項目が盛り込まれていた。 フィアットは自動車のほか農業・建設機械、金属加工などからなる複合企業体。自動車部門の売上高は全体の約四割だが、生き残り競争にさらされるフィアットにとって「自動車部門からの撤退」は必要な選択肢だった。一方のGMは欧州市場での小型車部門テコ入れのためフィアット・アウトの完全買収も視野に入れていた。同項目は双方の思惑が合致した産物だった。 だがフィアットの業績の急速な悪化で事態は一変。「赤字子会社を引き取るのは荷が重すぎる」とGM側が危機感を強めたからだ。 GMはフィアットが勝手に増資したことなどを挙げ「同項目の有効性はすでに失われた」と主張。フィアットは「契約内容は有効だ」と譲らず、真っ向から激突した。両社は二〇〇三年、(1)同項目の権利発生の時期を一年延期して「二〇〇五年一月二十四日」とする(2)今年十二月十五日までは訴訟を見合わせる――など先送り措置でひとまず対立を回避してきた。

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