「焼身自殺」相次ぐブルガリアの絶望

執筆者:佐藤伸行2013年4月11日

 このところ、政府に対する抗議の焼身自殺が相次いでいる。立て続けに6人が焼身自殺を図り、4人が死亡した。

 中国の支配に命を犠牲にして抗議しているチベットの人たちの話ではない。欧州連合(EU)の一角、ブルガリアで起きている悲劇だ。

 ブルガリアは2007年、繁栄への希望を胸にEUに加盟した。だがその後も「欧州最貧国」の地位から脱却できず、国民の疲弊は限界に達している。そこに電気料金の大幅な値上げが追い打ちを掛け、2月の厳しい寒さの中、幾万もの民衆は各地で激しい抗議デモを繰り広げた。中道右派「欧州発展のためのブルガリア市民」(GERB)を与党とするボリソフ首相はジャンコフ財務相を解任して乗り切ろうとしたが、民衆の怒りは収まらず、同月、内閣はついに総辞職。5月12日に繰り上げ総選挙が実施されることになった。

 

緊縮財政による国民窮乏化

 国民を貧困から救い出せないばかりか、汚職の腐臭を放ち続けるブルガリアの政治に対する住民の怒りと絶望は深い。焼身自殺に限らず、ビルからの飛び降りや列車への飛び込み、首つりなどの例が数多く報告されている。

 ブルガリアは、EU指導の下で、懸命に緊縮財政を続けてきた。財政赤字の水準はEU基準を満たしており、放漫財政で危機を引き起こしたギリシャなどとは一線を画していた。

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