パキスタンはイスラム圏で唯一、自動小銃のような小型兵器と、核兵器の双方を生産してきた国だ。カーン博士が手がけた精密ネットワーク「核の闇市場」は摘発されたが、家内制手工業にまで浸透した小型兵器の闇市場は、未だ手付かずのままである。 写真はパキスタンの古都ラホールを訪問した際に、市内の銃砲店を覗いたときのものだ。ラホールの旧市街は、前近代がそのまま残ったような佇まいで、テロの恐怖感さえなければ趣のある街だ。さまざまな商店が軒を連ねる新市街の一角に銃砲店があった。あまりに目立たない店構えのため、よそ者には気づきにくい。店の陳列棚におよそ十丁、奥の倉庫にも箱詰めにされたAK-47が見え隠れする。前号でも紹介した自動小銃だ。「お値段は」と聞くと、二百五十ドルとのこと。「ちょっと高いな」との一言に対して、大幅な割引と実弾一箱をサービスするとの答え。日用品と同じ感覚で、買おうと思えば武器が買えるのだ。 なぜパキスタンでは、いとも簡単に自動小銃や手榴弾が入手できるのであろうか。それは、政府と民間が大量の小型兵器を生産したからに他ならない。カラシニコフとして知られる自動小銃AK-47は、その代表例である。ロシアの銃設計士ミハイル・カラシニコフ(K)が、一九四七年(47)に開発した自動小銃(頭文字A)を、AK-47と呼んでいる。銃設計の神様トカレフに見出されたカラシニコフは、このとき二十八歳の誕生日を迎えようとしていた。氷点下、ツンドラ、灼熱、砂漠、湿地帯、乾燥地帯――どのような環境でも使用できる単純な構造が、AK-47の最大の特色だ。逆に言えば、誰にでも作れる兵器がAK-47ということになる。

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