そして韓国から「知日派」が消えた

執筆者:黒田勝弘2005年1月号

「親日派」の子孫である政治家の政界追放まで叫ばれる韓国。盧武鉉政権下、知日派の人脈は確実に枯れつつある。[ソウル発]鹿児島県指宿市での日韓首脳会談(十二月十七―十八日)を前に亡霊のようにもちあがった「征韓論」事件(?)は、盧武鉉政権下の韓国の対日観を象徴する興味深いできごとだった。それは日本で大衆的な“冬ソナ”ブームとして広がっている“ヨン様”の国のイメージとはまったく異なる。「何かと言うと昔のことをもち出して日本にいちゃもんをつける」という旧態依然の対日状況を感じさせる。 しかもその“事件”を主導しているのが、政権の中枢に布陣する革新派の若手世代だという。韓国政治の前面に登場した“ヨン様”に近い若手世代が、左派的ナショナリズムを背景にかえって対日強硬論を主張しているのだ。彼らはまた、日本統治時代の対日協力者である「親日派」をあらためて調査、糾弾し歴史に残そうという略称「親日真相糾明法」の制定を主導するなど“反日”に熱を上げている。 日本統治時代を直接経験し、その実際を明暗とりまぜ多様に知っている旧世代(彼らも公式には“暗”しか語れないという心理的負担にさらされてきたが)と違って、彼らは日本統治時代の実際は知らない。一九四五年の解放後に、教育や書物などで過去を知識として注入された極端な反日観の世代だ。彼らは観念的で図式化された反日歴史観にもとづき、すでに死者になっている「親日派」をムチ打ち、そうすることで自らがナショナリストであることを誇示しようとする。盧政権の中枢やその周辺にはこの種の新たな反日勢力が多く配置されている。彼らを支持勢力とする盧大統領(一九四六年生まれ)は、彼らをコントロールするより、それに乗っかる傾向が強い。

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