「防衛大綱」に積み残された「年次指針」
2005年1月号
新しい防衛計画の大綱が閣議決定された。最初の防衛計画の大綱は一九七六年に決定し、冷戦後の一九九五年に改定されたので、今回のものは第三次の大綱ということになる。今回の大綱の基本的な考え方は、筆者もその審議に加わった『安全保障と防衛力に関する懇談会報告書』(荒木レポート)の考え方を踏襲したもので、その意味で筆者には特に違和感のない改定となった。 ただし、防衛計画の大綱の決定にいたるマスメディアなどの報道から判断すると、マスコミもそして役所も、安全保障政策の根本的な考え方より予算がどうなるかのみに関心があったように見える。陸上自衛隊の定員がどうなるかが、財務省と防衛庁の最大の主戦場であったように報道された。どうもマスコミも役所も、大綱において重要なのは本文ではなく「別表」(数値目標)なのだと思っていたのではないか。たしかに、「別表」には、今後の自衛隊の定員や装備調達の予定が記されているから、これが日本の防衛政策のある種の特徴を示すのは当然だ。また、予算規模や装備それ自体も重要な要素に違いない。 しかし、安全保障政策において、装備や予算とならんで、あるいはそれ以上に重要なのは、戦略であり運用の仕組みである。かつて、一九八〇年代の防衛力の整備において、常に「別表」の議論ばかりがなされたことがある。別表の水準にどれだけ近づくか否かが、防衛政策の実質を決めているかのような議論であった。今後の安全保障政策において、そのようなことが繰り返されてはならない。調達された装備や人員が、どれだけ有効に安全保障政策に貢献しているかを常に検証していく必要がある。
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