政治が深める韓国経済の混迷

執筆者:深川由起子2005年1月号

内需不況にあえぐ韓国経済。「盧武鉉政権の失われた五年」にしないためには今すぐ手を打つべきなのだが……。「微笑んでいられるのはヨンサマだけ。私らはそれどころじゃない」 師走のソウルに長蛇をなすタクシー。ドライバーはようやく拾った客に吐き捨てるように体感景気の悪さを訴えた。二〇〇四年の韓国経済は二〇〇三年の三・一%から若干持ち直し、四%台後半の成長を見込む。牽引車となった輸出は、中国向けやIT(情報技術)製品の好調などで三〇%近くも増加し、史上初めて二千億ドルを突破した。しかしながら、景気は、輸出が設備投資を引き出し、雇用が拡大し、国内消費が併せて拡大する、という典型的な回復パターンを辿らなかった。 設備投資はむしろ、二〇〇三年第2四半期から二〇〇四年第1四半期まで減少するなど低迷を続け、経済活動人口中の就業者数も二〇〇三年の二千二百十四万名から一年で六十七万名程度増えただけである。失業率こそ全体で三%台に収まっているが、一九九七年の通貨危機以来二十歳代では一〇%台での高止まりが続き、大卒就職は超氷河期。世帯主には景気鈍化の度に繰り返されてきたリストラへの不安がのしかかる。 しかも、銀行の小口金融シフトと内需振興を図って政府が打ち出した信用カード優遇措置は一時的に消費を過熱させたが、間もなく十名に一人が信用不良者というカード破綻を生み出し、家計は重い債務を抱える。二〇〇三年に大手カード会社の経営危機が表面化し、金融機関の本格的な債務圧縮が始まると、消費は急激に落ち込んだ。国内の消費財出荷は二〇〇四年に入ってもマイナスの伸びが続く。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。