「ローマ法王の黒衣」が手にした絶大な権力

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2005年1月号

法王の言葉を唯一“理解”し、代弁する人物と、法王庁高官グループの間には深い溝が……[ローマ発]ローマ法王ヨハネ・パウロ二世とパーキンソン病との長い闘いが、いよいよ最終段階を迎えている。同時にバチカンの厳めしい壁の内側でも激しい闘いが繰り広げられている。ローマ・カトリック教会の主導権をめぐる暗闘、すなわち現在の法王と意思疎通ができる唯一の人物と、その人物に深い疑念を抱く法王庁高官グループとの闘いである。 かつてはスポーツ万能だった法王も、いまでは両脇を抱きかかえられなければ歩くこともままならず、一日の大半を車椅子で過ごしている。病状はますます悪化し、いまでは意味不明の音声を発するだけの状況だが、それでも法王は、崇高な意思をもって、あるいは一部の大司教に言わせれば「忌々しい頑固さ」をもって、各国元首や枢機卿などとの公式・非公式の謁見を続けている。ひざまずいて法王の祝福を受けた人々は、バチカンの外に出たとたん、案内役にこう尋ねる。「何もかも素晴らしく感動的だった。ところで、法王は何とおっしゃっていたのかい?」。 もはや法王は、独力では各種の儀式を執り行なうことはできず、無言のまま主宰役を務めるのが精一杯だが、一部の公式行事では、信者たちに何とか個人的なメッセージを伝えたいと強く望んでいる。とはいえ、その声は途切れ途切れで、ぜいぜいとした喘ぎ声が聞こえるだけだ。イタリアのテレビ局は、バチカンからの生中継をすることも多く、字幕使用を提案したが、法王自身から直ちに却下された。字幕の使用は、法王の側近グループにとっては、法王退位を主張する敵対グループの勝利を意味するからだ。

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