司法権は「1票の格差」を解消できるか

執筆者:宇野重規2013年5月1日

質問 「司法権の範囲はどこまで及ぶのでしょうか」

 

 ご質問をいただきました。最近1票の格差についての違憲判決が問題になっていますが、そもそも司法権の範囲はどこまで及ぶべきかという内容です。

 ここのところ、各地の裁判所による選挙の無効判決が続いています。結果として、衆議院の選挙制度を抜本的にあらためるか、それとも格差解消のためにとりあえず「0増5減」を先行させるかが、目下の政局の争点になっています。

  とはいえ、「裁判所が選挙の無効判決を下すということは、はたして無批判に受け入れるべきものなのでしょうか」。質問者の方はそう問いかけます。というのも、「無効となれば当然国政は混乱し、その影響は国民全般に及ぶわけですが、司法がその責任をとることはできない」からです(一部、字句を修正しました)。影響力の大きさを考えれば、司法権の及ぶ範囲にも限界があってしかるべきというご意見は、もっともであると思われます。  

 

「憲法の番人」としての裁判所

 現在の日本では、選出される国会議員1人あたりの人口が選挙区によって違い、人口が少ない選挙区の有権者ほど1票の重みが増すという状態が続いています。これでは憲法14条に規定された「法の下の平等」の原則に反しているとして、訴訟が続いていることは、よく知られている通りです。

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