カンボジア「シアヌーク王朝」の黄昏

執筆者:ケイ・ジョンソン2005年1月号

[ハノイ発]艶やかな絹飾りと踊り子たちに彩られ、念仏が唱えられるなか、十月二十九日、カンボジアは新しい国王の即位を祝った。八十二歳のシアヌーク前国王に代わって即位したのは、人生の大半をバレエダンサーおよび外交官としてフランスで過ごしてきた五十一歳で独身のノロドム・シハモニ国王だ。シアヌークと第六王妃であるモニク現王妃の間の子で、前国王の六男である。 国王の交代は、王室派であるフンシンペック党が凋落する中で起きた。亡命中だったシアヌーク前国王が一九八一年に創設し、次男のラナリットが党首をつとめる同党は選挙で連敗している。カリスマ国王の退位によって、カンボジア政治の王室離れはさらに進むものとみられる。 カンボジアの人々は長い間、王室への忠誠と民主主義の間に矛盾を感じずにきた。国王は政治に関与してはならないという憲法上の制約はあるものの、王族が政治家になることには何の問題もない。だが、フンシンペックが掲げる「王政下での民主主義」という綱領は時代に合わなくなりつつある。「自分たちの要求を満たしてくれるのは、必ずしも王家の人ではない。人々はそう考えはじめています」というのは、フンシンペック党議員として女性問題大臣を務めながら二〇〇三年に離党して野党サム・レンシー党に加わったムー・ソクフアだ。

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