パレスチナの新たな指導者が決まり、イスラエルでもガザからの撤退に道筋がついた。滞っていた中東和平は前進するのか。 年明け早々の一月九日に行なわれたパレスチナ自治政府長官(議長)選挙では、予想通りPLO(パレスチナ解放機構)のマフムード・アッバス(通称アブ・マーゼン)議長が当選し、「アラファト後」の体制づくりが本格的に始動した。イスラエルでもシャロン首相による連立工作が実を結び、ガザ地区のユダヤ人入植地から撤退する態勢が整い始めた。「和平達成の好機」と期待されている二〇〇五年はその意味で好スタートを切った。だが、和平への動きが現実化するにつれ、それぞれの社会の内部対立が顕在化し始めている。双方の指導者は自らの足元を本当に“和平モード”に切り替えることができるのだろうか。指導者の力量とともに、国際社会の関与のあり方も問われている。穏健ぶりは逆に足かせに 自治政府長官に当選したアッバス氏は一九三五年生まれ。アラファト議長死去直後にPLOの後継議長となり、今回の選挙でPLOと自治政府の両方を統括する立場となった。七〇年代からイスラエルの和平支持派と接触するなど穏健派として知られ、イスラエルへの武力攻撃にも否定的だ。選挙戦終盤でも「シャロンは和平のパートナー。今こそ交渉開始のとき」と和平実現を呼びかけた。結局、アッバス氏は六二%の票を得て、彼が掲げた和平路線がパレスチナ人の間でそれなりの支持を得たといってよい。同氏も「この勝利を故アラファト議長やパレスチナ人囚人にささげる」と勝利宣言した。

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