大地震発生。いざという時、自宅まで歩いて帰れるか――。 政府・中央防災会議の専門調査会は十二月半ば、日中、東京直下で地震が起きた場合、最悪のケースでは一都三県で六百五十万人もの人々が「帰宅困難者」になると推定している。繁華街など人が密集するところでは、花火大会のような大群集が路上にひしめく状況になりかねない。「その時」に備えて、日頃から自宅までの道を確認し、自らの足で歩いておこうと、年に一度の「サバイバル・ウォーク」を呼びかけているのが、吉武正一氏(六一)が代表を務める「帰宅難民の会」だ。「住宅メーカーに勤務していた時に阪神大震災が起き、被災した取引先を訪ねて現地に行きました。足がふるえて、涙が止まりませんでした。東京で働く私にとっても決して他人事ではないと思いました。何か自分たちにできることはないかと思い、防災を考えるきっかけとして仲間と一緒にサバイバル・ウォークを始めたのです。帰宅難民とあえて厳しい名前をつけたのは、命がけで我が家に帰らなければならない事態があるということを真剣に考えてもらうためです」 最初のウォークは一九九五年六月十八日、十二人が新宿の東京都庁からそれぞれの家を目指した。吉武さんは四十二キロ離れた八王子の自宅まで八時間かけて歩いた。

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