中国は今年、時速三百キロの高速鉄道の建設に着手する。注目された北京―上海は先送りとなり、重要度が比較的低い路線が先に建設される。一月中には北京―天津、広州―武漢などの路線の軌道工事の入札が実施され、その後の車両入札には川崎重工業や仏アルストムなどが応札する見込みだ。 高速鉄道は本来、北京―上海が最初に建設される計画だった。二〇〇八年の北京五輪に間に合わせるために昨年初頭にも入札があるとみられたが、いまだに入札実施の気配はない。「いま北京―上海に新幹線を導入すれば反日感情が沸騰する」と、中国のある鉄道関係者は指摘する。北京―上海は鉄道の発展の象徴になる路線だ。鉄道省を中心に、ここに世界最高峰の技術を誇る新幹線を導入すべきだと主張する向きも多くあるが、それでも慎重にならざるを得ないという中国政府の苦悩が垣間見える。 ただ、新幹線を推す声が根強いのも事実。新潟県中越地震での新幹線脱線事故を報じた国営新華社電は「安全神話に疑問が提起された」としつつも、開業以来重大事故を起こしていなかったことなども取り上げ、今回の教訓をどう生かすかという前向きな視点を盛り込んで解説した。最近では北京―天津間の路線を徐々に延長する形で上海までつなげ、日本企業へ順に受注させるとの観測が浮上している。一度に北京―上海間の入札を実施するよりも目立たずに新幹線を導入できるからだ。

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