またしても整備新幹線「ゴリ押し着工」

執筆者:岡山敬2005年2月号

「聖域は残されたということだ」 国土交通省幹部は吐き捨てた。 昨年十二月、政府・与党は整備新幹線で未着工だった三区間の新規着工を決め、二〇〇五年度予算案に八十億円を組み込んだ。北海道(新函館―新青森)、北陸(富山―金沢)、九州・長崎(諫早―武雄温泉=佐賀県)という三ルートに加えて、“落選”した福井県に配慮し、将来の新幹線乗り入れを前提とした福井駅の高架工事も盛り込んだが、この決定は「掟破り」の連続だった。綱渡りの財源、禁じ手の復活、将来に残した禍根――着工には地元への利益誘導を優先する政治家の欲望が示された。 そもそも、高速道路や地方空港の整備が進む中、なぜ新幹線の建設を進めるのか。二〇〇〇年末、政府・与党は東北(八戸―盛岡)と九州(新八代―鹿児島中央)の完成後、着工を見送った三地域の処遇を決めることで合意した。そして、この合意に沿って、津島雄二元厚相(青森)、森喜朗前首相(石川)、山崎正昭官房副長官(福井)、久間章生自民党総務会長(長崎)ら関係議員、さらに自治体が政府に新規着工を迫り、今回も「我田引鉄」が繰り返されたのだ。 ただ、財源は「綱渡り」だ。整備新幹線の二〇〇四年度の事業費は二千百十五億円。内訳は国費六百八十六億円と譲渡収入(東海道など新幹線資産を買い取ったJR本州三社が時価と簿価の差額を六十年間の割賦で負担するもの)の七百二十四億円、沿線自治体の負担が七百五億円となっている。このうち譲渡収入は二〇一二年度まで北陸(長野―富山)など既着工の三区間に充てられ、一七年度下半期以降は「つくばエクスプレス」(秋葉原―つくば、〇五年開業)整備に伴う返済財源に消える。そのため、一三年度から一七年度上半期までの譲渡収入を担保に金融機関から資金を借り入れるとともに、この間に見込める事業費(計一兆円)の枠内での新規着工を政府に求めたのだ。政府内には三百億円の金利負担に異論もあったが、押し切られた。

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