政治家はなぜ失言するのか

執筆者:宇野重規2013年6月10日

質問 「政治家はなぜ『失言』するのでしょうか」

 

 最近、政治家の「失言」が話題になっています。目立ったのはまず、猪瀬直樹東京都知事による「イスラム諸国はけんかばかりしている」です。『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューに答える最中の発言であり、「他都市の批判や比較を行なってはならない」とする国際オリンピック委員会の行動規範に反するとして、批判の対象となりました。

 もう1つは橋下徹大阪市長による従軍慰安婦問題についての発言です。旧日本軍において「従軍慰安婦は必要だった」とした上で、さらに在日米軍に風俗産業の活用を奨めたことが内外の批判を招きました。

 もっとも、橋下市長はこのうち在日米軍をめぐる発言については謝罪したものの、「従軍慰安婦を必要としたのは日本だけではない」として、発言の前半部分については「失言」と認めていません。

 ここで、それぞれの発言の内容それ自体については、あえて論じません。考えてみたいのは、政治家にとっての「失言」そのものです。

 

「失言」とは何か

 それではまず、政治家にとっての「失言」とは何でしょうか。辞書をひくと、「言うべきでないことを、うっかり言ってしまうこと」とあります。が、問題は「言うべきでないこと」です。政治家はいったい何を言ってはならないのでしょうか。

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