昨年十一月に死去したパレスチナ自治政府のアラファト議長については、数百万ドルもの資産を隠匿したとの噂がいまも絶えない。この隠し資産の捜索に、パレスチナ解放機構(PLO)の主流派組織「ファタハ」が乗り出した。 パレスチナ筋によれば、今年一月の選挙でアラファト後任の自治政府長官(議長)に選ばれたアッバス氏は、自らが最高指導者を務めるファタハの幹部会で「アラファト資産」の徹底捜索を命じた。 同資産の一部はすでにアッバス氏の管理下にある。しかし、故アラファト議長が過去二十五年以上にわたって、資産を国内外のあちこちに隠したり、秘密裏に投資したりしていたため、大半の所在は不明のままとされている。 アッバス氏は、アラファト氏が生前、過去十年間の重要な経済活動の詳細を記録していた秘密ノートをすでに入手しており、これを基に捜索を行なう方針のようだ。 これほどアッバス氏が捜索に熱心なのは、選挙資金獲得のためとの説が有力。自治政府の国会に相当するパレスチナ評議会選挙とヨルダン川西岸地区の地方評議会選挙は今年中の実施が予定されている。アッバス氏にとっては、ファタハの最大のライバルでPLOに属さないイスラム原理主義過激派「ハマス」に勝つことが何よりの課題だ。

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