「後継安倍晋三」の条件

執筆者:2005年3月号

 永田町に多少でも土地鑑のある人間であれば、だれしも「安倍晋三」が満五十歳を過ぎたと聞いて驚く。と同時におのれの齢に思いを馳せる。どこか頼りなげな表情だった政治家三代目の安倍晋三。その安倍晋三がポスト小泉純一郎の首相候補一番手に躍り出た。「奇人」小泉首相が誕生してから四月で満四年。これまでは後継者にふさわしい人物が見当たらない、というのが長期政権になった一つの理由であった。ところが、今年に入って、とくに北朝鮮による拉致問題絡みで「安倍晋三」の存在が注目され始めた。金正日体制に対する安倍の「経済制裁を実施する時期は到来している」という姿勢や「横田めぐみさんを絶対に見捨てない」という発言は、多くの国民の支持を得ている。 安倍晋三の顔をじっと見つめていると、黒縁の大きなメガネをかけた父親安倍晋太郎の顔が重なる。目を細めたときの表情はとくに似ている。面長は母親洋子から受け継いだもので、洋子の父親岸信介もまた安倍晋三の表情の上にときどき顔を出す。晋太郎の父、すなわち晋三にとって父方の祖父安倍寛も衆議院議員であり、また晋三の弟信夫は岸家へ養子に入り、昨年の参院選で山口選挙区から出馬、初当選した。岸信介の弟は佐藤栄作であり、安倍晋三を囲む政治環境はいまや米国のケネディ家に匹敵するほどだ。

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