ガーネム首相はリビアを「普通の国」にできるか

執筆者:マイケル・ビンヨン2005年3月号

改革を率いる首相は、ハーバード大学出のエコノミスト。本人へのインタビューをもとに、改革の成否を展望する。[ロンドン発]小柄で精力的、短気で切れ者のショクリ・ガーネム(六二)は、世界で最もタフな政治的任務を負っている人物の一人だろう。一年半前にリビアの首相に就いたガーネムの仕事は、十年以上も国際的な制裁を受け、孤立を続けてきたリビアの近代化を進め、何とか国際社会に送り出すことだ。しかも、海外経験をもつ専門家や閣僚は皆無に近いから、この仕事をほぼ独力でこなさなければならない。 米ハーバード大学に学んだ経済学者のガーネムは、二〇〇三年六月、新生リビアの経済改革を進めるため、同国最高指導者のムアンマル・カダフィ大佐(六二)から首相に任命された。仕事は山積していた。未開発ながらも莫大な石油資源に恵まれ、人口はわずか五百六十万人となれば、リビアの国民は、本来ならば、湾岸諸国のアラブ人と同様の快適な生活が送れるはずだ。だが、国際的な制裁措置と孤立、さらにはカダフィの掲げる「社会主義」システムを三十年以上も続けてきたせいで、生活水準は低落の一途を辿っていた。莫大な資金が海外の反西欧勢力に流され、一九七〇年には日産三百三十万バレルを記録した石油生産も、百四十万バレルにまで落ち込み、公務員の賃金は、八二年以来、凍結されたも同然だった。

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