パリ市長を争う2人の女性

執筆者:国末憲人2013年6月18日

 来年3月のフランス統一地方選に向けて、事実上の選挙戦が始まった。オランド政権が昨年5月の発足後初めて迎える大型選挙で、今後の政権の安定性を決める正念場だといえる。中でも注目を集めるのは、首都パリの市長の座を左右どちらが射止めるか。パリは、12年間にわたって市政を担ってきた左派が様々な実験的政策を展開してきた自治体であり、その是非を問うことは、フランスの今後の方向性を定めることにもつながっている。

 その市長の候補として、社会党を中心とする左派も、右派「国民運動連合」(UMP)も、女性を立ててきた。左派の候補は、アンヌ・イダルゴ現市第1助役(54)。右派の候補はナタリー・コシウスコ=モリゼ元環境相(40)だ。どちらが勝とうとも、初の女性パリ市長の誕生となる。「女の戦い」と、メディアは早くも盛り上がっている。

 

意気込み強い左派

 ドラノエ現市長は、エリート揃いの社会党の中で珍しく地方組織からのたたき上げだ。2001年に当時のジョスパン首相の信頼を得て立候補し、右派の候補者調整の乱れにも助けられて当選した。バスレーンの大幅拡大による乗用車の市内からの締め出しや、市営レンタサイクルの導入、大規模な緑化の推進など、メディア受けする新機軸を相次いで打ち出した。自身が同性愛者であることを公表し、マイノリティーの人権擁護のイベントを開催、各国の政治犯への支援も続けるなど、パフォーマンス性の強い左派的政策は、都市インテリの高い評価を得てきた。

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