昨年末の日本経済新聞に掲載されたトヨタ自動車社長、張富士夫のインタビュー記事の中に興味深いコメントがある。「日本経済二〇〇五年への視点」という連載で産業競争力について語ったもので、日本産業を猛追する中国の競争力をどう見るか、と問われて次のように答えている。「競争力の変化率を瞬間風速で見れば中国が日本を上回っているのは間違いない。しかし日米の関係でもそうだったが、追いかけるときは簡単でも近づいてからが難しい。物まねでなく自ら設計、開発しなければならない段階になるとこの格差は簡単に縮まらない。……二十年前に米GMとカリフォルニアに合弁会社を設立したが、当時の日米格差に比べると現在の日中の方が遥かに大きい」 張の念頭には、次世代の自動車技術、とりわけハイブリッド車があったのかもしれない。たとえガソリン車の技術で追いついても、すでに技術競争は環境関連の分野に移っており、実は環境にやさしい車を一番求めている中国で一歩先にプレゼンスを確保させてもらう、という意味にも読めてしまうのだ。 もはや誰も、ハイブリッド車が「燃料電池車までの中継ぎ」とは思っていない。二一世紀初頭の自動車技術の主戦場は、ハイブリッド技術にある。今年一月にデトロイトで開かれた北米国際自動車ショーでは、米ビッグスリーが方針を転換してハイブリッド車の拡充を相次いで表明。著名な自動車アナリストのマイケル・ブルイネスタイン(プルデンシャル証券)は、「ハイブリッド技術が自動車市場の主流になる」とし、そのうえで米国のハイブリッド車市場は二〇一〇年には、二〇〇三年の三五倍の三〇〇万台規模(新車販売の占有率二〇%)に膨らむと予測している。

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