松下電器「中村降板」説に三つの根拠

執筆者:柴田雄大2005年3月号

 松下電器産業の中村邦夫社長(六五)の去就に関心が集まっている。デジタル景気が減速する中での大幅増益決算、世界をにらんだ大規模な企業提携など、一見すると順風満帆の「中村丸」に死角はなさそうだが、「今年六月の株主総会後に社長を辞めるのでは」との観測が消えない。 その根拠のひとつは、昨年末から続く松下関連のニュースラッシュだ。その一部を拾うだけでも「松下リース・クレジットを住友信託銀行へ売却」、「松下興産を売却、大和ハウスが有力」、「リストラ継続、今期七千―八千人削減」、「松下、日立がプラズマパネル技術で提携」、「中国・大連の子会社の技術者四倍に」――わずか一カ月あまりの間に「豪腕の中村社長ならでは」と周囲が認める大きな決断が相次いだ。「破壊と創造」をキーワードに誕生した中村政権。松下リース・クレジットと松下興産のニュースは、その「破壊」が最終局面に入ったことを意味している。 リース・クレジットはバブルの時代に旧東洋信金架空預金事件で有罪が確定した「北浜の女帝」、尾上縫に貸し込んで不良債権の山を築いたグループのノンバンク。松下にとって「負の遺産」の象徴的な存在だった。同社の売却で圧縮される資産は約四千三百億円。これで合計の資産圧縮額は一兆四千億円になり、中村社長が就任後に公約していた「(在庫や棚卸資産、不良債権などを含めた)資産一兆円圧縮」の目標は軽く達成された。

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