ロシアへ進出した日本企業に「ユコス型」の受難が続いている。最も成功した合弁事業とされる東シベリア・イルクーツク州の製材企業「イギルマ大陸」も現在、ロシア側の乗っ取りの危機に直面している。 同社は、ソ連時代の一九八七年に専門商社・大陸貿易の出資で、日ソ合弁第一号として発足。他の合弁の失敗をよそに毎年利益を上げ、千五百人を雇用するほか、地元の村に教会や保養施設を設け、住民からも高い評価を受けてきた。 しかし、昨年秋からアルミ業界の新興財閥トップ、デリパスカ氏が盛んに圧力をかけ、ロシア人社長に経営権を移管するよう強要。地元メディアには同社を中傷する記事が載り、同社は警察の捜査や監査を受けた。当局は、ロシア側への配当が不当に少なく、製材を安く見積もって国家に損失を与えたと主張。「税務調査で巨額の追徴課税が要求され、乗っ取られる恐れがある」(大陸貿易)という。 プーチン大統領自らが大手石油企業ユコス解体で範を示したように、権力機関と組んだ新興財閥による企業乗っ取りは、現在のロシアでは珍しくない。日本企業が関わるケースでは、日露関係の冷却化も背景となっているようだ。 在露日本企業は「次はわが身」と戦々恐々。「日本人スタッフが九十人以上いる在露日本大使館は、もっと邦人企業を守ってほしい」(商社支店長)との声も日増しに強まっている。

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