あえて、小泉後は「岡田」

執筆者:2005年4月号

 時折、ぶつぶつと世の中のことを慨嘆したりするせいか、「蠅」子のような者にさえ「ポスト小泉はだれでしょうかねぇ」などと訊ねる人がある。そのときには、必ず「岡田克也でしょう」と答えることにしている。問いかけた相手はぎょっとした顔をする。「総理になるような人物でしょうかねぇ」と、こちらの回答を受け入れがたい、できればもっと会話が継続するような当たり前の名を挙げてほしいという顔をする。「安倍晋三でしょうね」などと言えば、おそらくその人は、得たり、という表情になるに違いない。 そこまでわかっていて、「蠅」子は「岡田」の名を連呼するのである。「でも岡田は民主党でしょう?」と、いっそう不信感を募らせたご仁は、見当違いな人物に問いかけてしまったことを後悔しつつ、楽しいラリーの続かない会話を終わりにしようとする。「そうですよ。民主党代表です」と答える。そう簡単に相手の思うつぼにはまってたまるか、とこちらも相当に意地悪く振る舞う。「どうしてですか。イオングループの御曹司だから、カネがあるということですか」とこれまた二十年ぐらい感覚がずれたことを言う。 自民党政権が倒れれば、次は野党第一党の党首が総理を引き受け、内閣を組織する、ということがごく当たり前のようにならなければ、政治はましなものにならない。ポスト小泉は?という問いに、自民党政治家の顔しか浮かばないようでは、競争原理がきちんと働いていないことになる。だから、「蠅」子は「岡田」と答えることにしているのだ。彼に総理として求められる能力がどの程度備わっているかは知らない。どういう政治哲学、経綸の持ち主かも分からない。もちろん、民主党代表が別の人物に代わっていれば、その人の名を挙げる。

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