アロヨ大統領の足元で盛る「二つの火種」

執筆者:水本達也2005年4月号

選挙で勝つため獄中の過激派指導者とも取引していた大統領。政権への不満が充満する国軍内でも不穏な動きが絶えない。[マニラ発]「(アロヨ大統領への)バレンタインの贈り物だ」 二月十四日夜、フィリピン(比)の金融街であるマカティ市と南部のミンダナオ島ダバオ市など計三カ所で爆弾テロが同時発生した。マカティ市内では、客を乗車させようとしたバスが突然爆発。起爆装置は携帯電話だった。テロリストはただ電話をかけるだけで、一瞬にして百人以上を殺傷したのである。 フィリピン版「同時多発テロ」が発生したその時、アロヨ大統領夫妻はマカティの爆発現場からわずか二ブロックしか離れていないホテルで食事をしていた。現場に足を運ぶ大統領と前後して地元ラジオで冒頭の犯行声明を流したのは、ミンダナオ島の隣のバシラン島を拠点とするイスラム原理主義組織アブ・サヤフだった。 だが、その手口から東南アジアのイスラム系テロ組織「ジェマア・イスラミア(JI)」の犯行と予想した治安関係者も少なくない。実際、当局はアブ・サヤフのメンバー以外にJIのメンバーも逮捕しており、東南アジア域内で活動するJIの“長い手足”が改めて浮き彫りとなった。

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