イラクにのしかかる「経済失政」のツケ

執筆者:木辺秀行2005年4月号

復興を妨げているのはテロだけではない。中東の「経済改革モデル」にというアメリカの目論見は崩れ、イラクは「失敗国家」化の瀬戸際。 イラク戦争終結後、英『エコノミスト』誌は米国を中心とする連合国暫定当局(CPA)が打ち出したイラクの経済再建案を、「まるで外国人投資家のウィッシュ・リスト(欲しいもの一覧)だ」と論評した。 外国企業は一〇〇%の所有(石油部門を除く)を認められ地元企業と同じ法的権利を持つ。外国銀行は自由に支店を開設でき、法人税は一五%以下。関税も五%――。「実現すれば資本家にとっての理想郷」になるはずのイラクは、しかし、当初の青写真とは程遠い現実の中にある。 一月三十日に国民議会選挙が実現して安定への一歩を踏み出したものの、二月二十八日には中部ヒッラで一度の攻撃としては戦後最大の百人以上が死亡する自爆テロが発生。今後の道のりの険しさが改めて印象づけられた。こうした武装抵抗勢力のテロによる治安悪化が、戦後復興のもたつきの大きな原因であることは間違いない。 ただ、その背景で、経済再建の失敗が混乱に拍車をかけている点も見逃せない。米国はイラクを、中東の「民主化のモデル」であると同時に、「経済改革のモデル」としても位置づけた。その柱は国営企業の民営化と補助金削減、外国資本の導入だ。バグダッドに向かう機内でCPAのブレマー米文民行政官と乗り合わせた米『ワシントン・ポスト』紙のチャンドラセカラン記者は、ブレマー氏が民営化の重要性を声高に語っていたと記している。

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