バラク・オバマ大統領は約1カ月前の6月25日、ワシントンDC市内にあるジョージタウン大学でエネルギー・環境政策について演説し、「気候変動戦略」を発表した。演説の中でオバマ大統領は、既存及び新規の火力発電所から排出される二酸化炭素(CO2)排出量を抑制する新基準を米環境保護局(EPA)に策定させる方針を明らかにし、政権第2期目の最優先政策の1つとして気候変動対策に積極的に取り組んでいく意向を改めて表明した。オバマ大統領は今年1月に行なわれた第2期大統領就任演説や今年2月の上下両院合同本会議における「一般教書演説」の中でも、気候変動対策に積極的に取り組む必要性を強く訴えていた。

 米国内では、現在、ウエストヴァージニア、ケンタッキー、テネシーといったアパラチア山脈沿いの州やペンシルベニア、オハイオといった中西部、ワイオミング、モンタナといったロッキー山脈に近い州で石炭採掘が行なわれている。1980年以降、米国では石炭を利用した電力供給のシェアは50%前後で推移し続けていた。だが、近年の米国内における「シェールガス・ブーム」により天然ガス価格が低水準で推移したこともあり、各電力会社は温室効果ガス排出量の多い石炭火力発電から、安価で、かつ、環境にも優しい天然ガス火力発電に大幅にシフトしつつある。その結果、米国内における石炭を利用した電力供給のシェアは、2012年には1970年代以降では最低水準となる37%にまで低下しており、石炭業界は益々厳しい状況に追い込まれている。既存及び新規の火力発電所から排出されるCO2の排出量を抑制しようとするオバマ政権の「気候変動戦略」は、米国内での石炭消費量を減少させることになるため、石炭業界や石炭採掘が州経済にとって重要な役割を果たしている州の関係者らは、オバマ大統領の気候変動対策重視の方針に猛反発している。そのため、2014年中間選挙キャンペーンでは石炭業界や石炭業界とは近い関係にある共和党からの激しい巻き返しが予想されている。

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