「共済の破綻で四百万円の掛け金を失ったけれど、共済を認可した県からの補償はなし。せめて失われた掛け金が雑損控除にならないかと税務署に行ったら『詐欺で失われた金は対象外』と門前払いされました。踏んだり蹴ったりですよ」 三重県四日市市で自営業を営む夫婦は、そう言って肩を落とした。 筆者は本誌三月号で、共済組合の杜撰な運営実態をレポートした。なかでも象徴的だったのは四日市市のケースだ。「四日市商工貯蓄共済組合」と「四日市商工共済協同組合」は二〇〇二年五月に破綻した。被害総額は約四十億円。被害者の数は延べ千五百人。中には九千万円もの大金を預けていた組合員もいた。 限られた構成員で運営する共済組合には、銀行や保険会社と違い公的なセーフティーネットがない。そのため、破綻によって自殺未遂や失意の病死、一家離散などその後の人生設計を大きく狂わされた人も少なくなかった。都道府県から認可を受けた「公的」な共済組合といえども「安全」ではない――取材で浮き彫りになった事実は、その後も改善されていない。 確定申告のシーズンに、四日市で破綻した共済の組合員たちは新たな難題に直面していた。「共済の破綻で失われた金は雑損控除の対象外」。彼らが失った掛け金や預け金は税法上での救済策も適用されない見捨てられた存在だったのだ。四日市共済組合の破綻は放漫経営によるもので、元理事長は背任罪で起訴され昨年実刑も確定している。冒頭の夫婦は、そうした事情を詳細に説明したが、税務署員は「国税庁に相談する」と答えを避けたという。だが、その答えは聞くまでもなくわかっている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。