「島内分裂」を促す中国の台湾政策

執筆者:藤田洋毅2005年5月号

胡錦濤の真の狙いは何か。連戦・台湾国民党主席の訪中計画の裏にある動きとは? そして危機の年はいつか――。「戦死者は二万人から三万人」 その言葉を聞いて、中国共産党のトップ九人の顔に緊張が走った。党政治局常務委員会が党中央軍事委員会の軍制服組メンバーを招き、台湾への武力発動をめぐって討議した際のことだと、複数の筋が明かした。軍側が予測としてはじき出した「戦死者の想像を超える多さに、一瞬、会場は沈黙に包まれた」のである。 会議に出席したのは、胡錦濤総書記をはじめ九人の政治局常務委員すべてと、党中央軍事委から郭伯雄、曹剛川の両副主席、総参謀部・総政治部・総後勤部・総装備部のいわゆる軍四総部トップの委員四名。そのほか、発言権のない「列席」の資格で海軍、空軍、第二砲兵(ミサイル部隊)のトップや四総部の高官が控えていた。時期は、江沢民・前党中央軍事委主席が完全引退した昨年九月の第十六期党中央委員会第四回総会(四中総会)のほぼひと月半前、八月上旬のことだったという。 最初に報告に立ったのは、作戦を担当する梁光烈・総参謀長。部厚い作戦計画書を前に梁は「台湾攻略は二十七日間で完了できる」と結論を述べ、ここまでは会議も平穏に進行した。ところが梁が、予想される中国側の戦死者数に触れるに及んで、胡らの表情は一変したのだという。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。