ドイツの郵政民営化会社であるドイツポストの次の一手に注目が集まっている。政府保有株の売却でフランクフルト証券取引所に上場したのが二〇〇〇年。それからわずか五年で世界を代表する大物流会社へと変貌を遂げたドイツポストが今その照準を日本に向けている、との見方がもっぱらだ。 今年一月、永田町の首相官邸で開かれた郵政民営化の勉強会にドイツポストのツムヴィンケル会長が招かれた。それまでも竹中大臣(郵政民営化担当)をはじめ日本政府の関係者や日本郵政公社の幹部がドイツポストを訪ねており、日本の郵政改革のモデルのひとつがドイツポストであることは明らか。そんな日本の質問攻勢にドイツポストの首脳陣は嫌な顔ひとつせず付き合ってきた。背景には、日本郵政公社と組むにせよ、その競争相手である日本の民間物流会社と組むにせよ、郵政民営化のプロセスを熟知することは、アジアの大市場・日本の攻略につながると判断しているからだ。 現在、日本郵政公社はオランダの郵政民営化会社TPGと将来の提携を視野に入れた交渉を進めているが、生田正治総裁は同時にドイツポストなどとの友好関係の構築に前向きな姿勢をみせている。 ドイツポストは二〇〇〇年九月にベルギーの宅配・輸送大手DHLインターナショナル株の五一%を取得、傘下に収めた。その後ルフトハンザ・ドイツ航空などの保有DHL株を買い、二〇〇二年十二月には完全子会社化、グループの全物流・運輸事業を「DHL」ブランドに統一。二〇〇三年にはDHLインターナショナルが米運輸大手エアボーンの陸上宅配部門を買収し、米国宅配市場で米フェデラルエクスプレスとユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)に迫る業界三位となった。世界市場でもUPS、フェデックス、オランダのTPGと並ぶ世界四強に躍り出た。

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