次に狙われるのは「お買い得のTBS」なのか

執筆者:神谷二郎2005年6月号

視聴率低迷に悩むTBSだが、保有する優良資産は垂涎の的。昔日の「民放の雄」は買収防衛策をいちおう整えはしたが――「あちこちから、次はTBSが危ないと言われているが、上場している企業は簡単に舵が切れない。フジテレビさんもご苦労されていると思う。株価を上げるとか、資産総額を増やすとか、安定株主を増やすとか方法はいろいろある。我々とすれば、地道に一生懸命いい番組を作って少しでも企業価値を上げて相対的に買収しにくくするというのが一番。遠回りだがそれしかないのかなと思っている」 三月三十一日、定例会見に臨んだ井上弘社長はあっさりと「ありうべき危機」を口にした。フジテレビとライブドアがにらみ合っている最中のおっとりした物言いは“公家集団”という異名を改めて思い出させた。 ライブドアによるニッポン放送株買収劇から、「PBR(株価純資産倍率)」という言葉が頻繁に口にされるようになった。企業の株価が保有資産に比べて割安かどうかを示す指標だが、たびたび一倍(株価と一株あたり純資産が同じ)を割り込んでいた割安なニッポン放送株はライブドアから敵対的買収をかけられるハメになった。テレビ界を見ると、民放キー局の中で限りなく一倍に近いPBRで推移しているのがテレビ朝日とTBSである。特にTBSは、その株主構成や資産価値などから、投資家にとって「丸々と太った仔豚」だといえる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。