[ロンドン発]総選挙翌日の五月六日、トニー・ブレア英首相は、首相官邸前の路上に置かれたマイクの前に立った。「勝利を誇らしく思う。選挙期間中、私は人々の意見に耳を傾け、そして学んだ……」 労働党初の総選挙三連勝、しかも、この日は首相にとって五十二回目の誕生日でもあった。しかし、勝利宣言は、笑顔のない、高揚感に乏しいものだった。 これは「灰色の結果」のせいだ。英国では、与党と全野党との議席差が勝敗の基準にされる(全議席数六百四十六)。与党・労働党が百以上の差をつけて勝てば圧勝、五十以下なら「事実上の負け」といわれていた。結果は六十七。解散時の与野党議席差から百近くも縮まった。勝つには勝ったが、「敗北に近い勝利」というのが大方の受け止め方だ。 この影響は、すぐに表面化した。選挙区から戻った労働党議員たちから、首相の責任を問う声があがったからだ。それも反ブレア派だけでなく、これまで党執行部に忠実だった議員からも、早期退陣を求める声が起きた。例えば、労働党の地盤、英中部選出のトリケット議員は、「選挙区では、ブレア時代は終わったというのが圧倒的な有権者の声だった。党の政策は支持してきたが、首相は交代すべきだ」と新聞にコメントした。ブレア支持派が実名で早期退陣を求めるのは、二期目までは考えられなかった。

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