ミャンマーの首都ヤンゴン中心部の三カ所で五月七日、同時爆弾テロが発生した。囁かれているのは、タン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長を頂点とする現軍政指導部の追い落としを狙った旧国防省情報総局(MI)による犯行説だ。 軍政当局は「カレン民族同盟(KNU)やシャン州軍(SSA)など内外に拠点を置く四つの少数民族組織が国家転覆を企図してテロに及んだ」と非難したが、名指しされた組織はいずれも関与を全面否定。ミャンマー軍との国境付近での武力衝突を回避する目的で、かつてKNUやSSAを“緩衝役”として利用してきたタイの国防省関係者の間でも「現指導部の手の内を知る旧MIだからできた、プロ集団による作戦」(陸軍第三軍管区司令部当局筋)との見方が支配的だ。 MIは、昨年十月に不正蓄財容疑などで逮捕・解任されたキン・ニュン前首相が二十年以上にわたり牛耳ってきたエリート集団。軍政内の秘密警察の任務を担っていたが、前首相逮捕とともに解体。メンバーの大半は逮捕され、終身刑を受けたり、辺境の歩兵部隊送りになったりしている。 長らく治安維持を一任してきたキン・ニュン派を粛清したとたんに軍政下で最悪のテロを許し、面目丸つぶれのタン・シュエ指導部は、その後、米中央情報局(CIA)の関与説を唱えてみせたりしながら、旧MIグループの摘発にも血眼になっている。

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