地球温暖化が大きく塗りかえる「ワイン地図」

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2005年6月号

シャンパン生産の最適地はイングランドに、ボルドーはノルマンディで……ワインの名前と生産地が一致しない事態も起きかねない。[ローマ発]華やかな歴史に彩られたワイン。だが、その行く手には驚くべき未来が待ち受けているかもしれない。「地球温暖化によって、ワイン生産地が大幅な北上(南半球では南下)を余儀なくされる可能性がある」と、一部の気象学者が指摘しはじめたからだ。 かつてワインを“発見”し、その醸造技術を繊細な芸術の域にまで高めた先人たちは、何千年もの間、いかなる気候変動に見舞われようとワイン作りを守ってきた。今年一月ローマで発見された壁画は、先人たちがこの「飲む宝石」に心血を注いできた歴史を雄弁に物語るものだった。 皇帝ネロの黄金宮殿「ドムス・アウレア」の遺跡から発掘された紀元一世紀当時のモザイク壁画には、ブドウの収穫からワイン醸造に至る過程が描かれていた。紀元前三五〇〇年、メソポタミアで最初にワインが作られて以来、基本的な作業は何も変わっていないことがわかる。 とはいえ、この百五十年間、生産者たちは独自の味わいを持つワインを生み出し、市場での人気と価値を高めるべく技術向上に腐心してきた。今やワインは“鑑賞”に堪えうる芸術品であり、珠玉の一本には何百ドル、何千ドルという大金を投じる愛好家も少なくない。

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