ヘッジファンドと米住宅市場に膨らんだ巨大なバブルが、世界の債券市場に異常現象をもたらしている。「世界の債券市場で広範に起きている、予期せざる行動は『謎』である」。グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、二月の米議会証言で述べたこのくだりが、金融界で今年の「流行語大賞」となろうとしている。「謎」に当たる言葉は「conundrum(コナンダラム)」。「根拠なき熱狂(irrational exuberance)」かどうか。米国株に対して、グリーンスパン議長が一九九六年十二月に発した問いは、IT(情報技術)バブルが崩壊するまで、金融関係者にとって「スフィンクスの謎」となった。今また、債券市場に「謎」を投げかけようとしている。 FRBが誘導対象とする短期のフェデラルファンド(FF)金利の引き上げに転じたのは、昨年六月。連邦公開市場委員会(FOMC)のたびに〇・二五%ずつの「慎重なペース」で利上げを続け、一年間の利上げ幅は合わせて二%となった。FF金利の水準は現在、年三%である。 市場の「期待(将来の予想)」を反映する長期金利は、アベコベに低下基調をたどっている。十年物米国債の利回りでみた長期金利は六月上旬には四%を下回り、同議長が「謎」と呼んだ二月時点よりも低くなっている。長短金利の格差は一%を下回る、ニアミス状態である。

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