「あらゆる事態を想定して準備するのは当然でしょう」――中国外務省の幹部は、九月三日の「反ファシスト戦争勝利六十周年」の記念式典に、「小泉首相を招待する可能性を排除しない」と明言した。 ただし、靖国神社参拝問題について「小泉首相が断念を表明するのが前提」だという。この幹部は「日本が求めている国連安保理常任理事国入りにも決してマイナスにはならない」と、靖国と国連改革への対応を連動させる姿勢を滲ませた。 小泉首相が記念式典に参加する可能性がほとんどないのは、中国側も承知している。だが、直前まで「参加できない」と明言していた五月九日のロシアの対独戦争勝利記念活動については、急遽、モスクワに飛んで出席した。「万が一の可能性」を視野に入れて、中国側は日中関係回復のムード作りのため、小泉首相が訪中したら「河北省の、ある町にご招待したい」という。日中戦争時の戦闘で、「日本軍が捨てて逃げた兵士十人余りの遺体と中国の戦死兵を、地元住民が同じように手厚く葬ったお墓が最近、発見された」からだ。墓碑には「父母にさよならを言うこともなく、祖国の山河を再び見ることもなく、ここに眠る」と刻まれているそうだ。「異国で倒れた兵士の墓前でも、小泉首相は不戦の誓いを捧げてほしい」と幹部は提案している。前提が前提だけに、小泉首相が乗るかどうか。

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