「鶴島社長は混乱の責任を取って、すっぱり辞任すべきだ」 東京・兜町の東京証券取引所内にはそうした不満が渦巻いている。有価証券報告書虚偽記載やインサイダー取引が問われた西武鉄道、粉飾決算が発覚したカネボウ、(実際の権利者と記載された株主名が違う)名義株を隠していた小田急グループ――相次ぐ上場企業の「開示スキャンダル」で批判が集まったのは、東証の対応の遅さだった。 鶴島琢夫社長(六七)は、昨年一月に急逝した土田正顕前社長のリリーフとして就任した。旧大蔵事務次官経験者がトップに就任する「天下り」への批判を受け、副理事長で退任していた鶴島氏が引っ張り出されたのだ。東証自体の年内上場予定を前に、東証の幹部が「御しやすいプロパー社長」を望んだのは言うまでもない。東証株の九割を保有する証券会社の中でも中小証券会社のオーナーには上場のキャピタルゲイン(株式の値上がり益)を期待する向きも少なくなく、上場に難癖をつけかねないうるさ型のお目付け役が天下ってこなかったことを、彼らもひそかに歓迎した。「鶴島丸」は上場の期待を帆に受けて出港したのだ。 だが、就任時にマスコミが囃した「官からの脱却」という美辞麗句はすぐに鳴りをひそめる。社長に就任した鶴島氏は、自らが仲人を務めた後輩や「鶴島ゴルフスクール」と呼ばれる仲間たちを幹部に取りたてた。強い身内主義は東証内部に不満を鬱積させ、混乱をきっかけに鶴島社長の資質を問う声となって噴出した。

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