米国のシリア空爆の対象は

執筆者:池内恵2013年8月28日

 アサド政権がダマスカス近郊で大規模に化学兵器を使用した疑惑が強まるにつれて、シリアへの限定的空爆論米国西欧で急速に高まり、今月内にも限定的な攻撃が行われるのではないか、との観測が流れている。

 もし攻撃するとすればどのような標的に対してなされるのか。注目されているのが、7月末から出回っている、ワシントンの戦争研究所(ISW)上級海軍アナリストで米海軍の作戦立案に携わったクリストファー・ハーマーのレポートである。「統合防空システム(IADS)以外のシリア空軍の水準を低下させるために求められる出撃と兵器」と題したこのレポートは、シリアへの介入を主張してきたマケイン上院議員らに即座に注目された(概要は同研究所のホームページからダウンロードできる)。 

 このレポートは、「シリアの攻撃目標を最小限に限定し、米国側の犠牲を最小限にとどめるにはどのような種類の攻撃をどの対象に向けて行えばいいか」という課題設定をしている。要するに極力シリア問題への関与を避けたい米国が、しかし介入を余儀なくされた場合に、「何らかの成果を上げるための最小限の攻撃の方法と攻撃目標は何か」という課題に応えたものである。

 そのため攻撃によって達成しようとする目標は極めて限定されている。ここでの目標は、反政府軍が政府軍に対して最も不利なのは空軍力の差(そもそも反政府側はまったく空軍力を有していない)にあるという認識から、シリア空軍の戦力を弱めることで、反政府軍にとって有利な状況を作り出す、というものであるようだ。これが戦略目標として適切であるかどうかは定かではない。あくまでも米側の消極姿勢の範囲内で目標を設定しているようだ。

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