東南アジアから北朝鮮、シベリアにまで中国系カジノはつながっている。“大中華賭博圏”を通じて、北京の政治的影響力は広がる。 ブラジルで発行されている華字紙「南美僑報」(二〇〇五年一月十五日付)が、中国人の強い射幸心を嘆いていて興味深い。曰く、「いまや世界中のカジノで中国人を見かけないことはない。このままでは国際社会の主流に入ることは難しい」。 気がつけば、いつの間にか中国は“賭場回廊”に囲まれている。中国雲南省と国境を接するミャンマー東北部の果干から、タイ、ミャンマー、ラオスにまたがる「ゴールデン・トライアングル」、マレーシアのゲンティン高原、マレーシアとシンガポールの間のジョホール海峡洋上、マカオ、北朝鮮、さらにシベリア東部まで続く地域。ここでは、いまや八十カ所を超えるカジノを数えることができるが、非合法も含めると二百余カ所で数千軒との説すらある。 それらカジノの経営者も客も、射幸心を有り余るほど持っている華人と中国人たちだ。数年前、カンボジア西北部のルビー取り引きの中心地として知られたポイペトを訪れたが、かつてポル・ポト派の拠点だった面影は皆無、さながらカジノの街と化していた。十軒を超えるカジノの経営者は全てカンボジア籍の、客はタイ籍の華人だったが、なかには中国人観光客と思われる一団もチラホラ。ある経営者はカンボジアの有力政治家やプノンペンの華人黒社会との太いパイプを自慢していたが、香港、台湾、中国の黒社会と結ばれていることも明らかだった。

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